
感性アナリスト、随筆家。1959年生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて、14年にわたり人工知能(AI)の研究開発に従事。後にコンサルタント会社、民間の研究所を経て、2003年に株式会社 感性リサーチを設立、代表取締役社長に。
著著に『ちょっとしたことで大切にされる女 報われない女』(王様文庫)、『鈍感な男 理不尽な女』(幻冬舎)、最新刊は『英雄の書』(ポプラ社)「女もヒーローになる時代。女性たちにこそ読んでもらいたい、人生に立ち向かうための脳科学です」(黒川先生)
雑誌『MyAge』のオンラインメディア『OurAge』http://ourage.jp/でも、「黒川伊保子先生に聞く脳育ての術」コーナーに登場。脳の話をもっと知りたい方はこちらをチェックして!
http://ourage.jp/column/karada_genki/19524/
すっかり秋になりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。集英社女性誌企画編集部・編集長のKです。
このコラムでは、集英社の書籍やムック、雑誌、サイトからあなたの美と健康に役立つ話題の記事をピックアップし、お届けしています。
さて、スポーツの秋、あなたはカラダにいいこと、何かしていますか?
私は、最近、お洒落なスニーカーを入手して、通勤の時に一つ前の駅で降りて歩くようにしています。
オンラインメディア『OurAge』で、人工知能のエンジニア、黒川伊保子さんが「脳神経回路を洗練させるには、
ウォーキングのような少し汗ばむ程度の有酸素運動を30分~1時間続けることがよい」というのを読んだからです。
今回は、黒川さんおススメの、簡単「脳トレ」習慣を紹介します。今日から、さっそく生活に取り入れてみてください。
脳も、カラダも、ココロもイキイキ。いつまでも健康で素敵な女性でいたいですね!
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/上田恵子
長年、人工知能のエンジニアとして脳の研究をしてきた黒川伊保子さん。
脳を「装置」として見立て、どのような入力に対してどのような演算が行われ、どう出力されるのかを追求してこられました。
そこで、脳の専門家である黒川先生に、人生をずっと快適に過ごすため、普段の生活の中で必要なこと、
ご自身も日々実際に行っているという簡単な「脳トレ」の方法をいくつか教えていただきました。
人間の脳は、その日の体験や思考を脳神経回路に定着させながら、毎日進化しています。しかも失敗に使われた回路には電気信号が行きにくくなり、成功に使われた回路には電気信号が行きやすくなるようプログラミングされています。
そうやって日々洗練されていく脳が、「即座に本質を見抜き、ぶれない状態になる=出力性能が最大になる」のは55歳の終わり頃。つまり脳を装置として見立てた場合、成熟するのは56歳からということになるのです。
脳生理学の世界では、30歳を越えた脳は老化の一途をたどるとされていますが、脳機能論では「出力性能がいい=ムダな信号が流れない」というのはひとつの進歩。一部の細胞が老化することでムダな信号が流れなくなり、必要なところに必要な信号が素早く流れるようになるからです。
なので、40代頃から増えてくる「固有名詞が出てこない」といった一般的な物忘れを気に病む必要はありません。「忘れてもいいことだから忘れたのだ」と割り切ってしまっていいのです。
最強の幸せ脳に仕上げるため、大切に、しっかりと脳を育て、心身ともに成熟した大人の女性を目指しましょう。
ネガティブ回路を駆逐し、ポジティブ回路を作ること!
過去の失敗をクヨクヨと思い出したり、まだしてもいない未来の失敗を案じて思いわずらうと、脳はネガティブ思考の回路を上書きしてしまいます。
上書き行為をすると、そこへ電気信号がスムーズに流れるようになり、余計に失敗しやすい脳になります。「ネガティブな過去を蒸し返さない、未来を思いわずらわない」は大人の女の脳トレの鉄則です。
そうは言ってもついネガティブに傾いてしまうという人は、今日から以下のことを心がけてみてください。
これらは後ろ向きの思考をつくり出す、マイナスの言葉です。できるだけ使わないようにしましょう。
人を揶揄(やゆ)すると自分がとやかく言われるのが怖くなり、先の失敗を思いわずらうようになります。
これらは脳にポジティブ回路を作る魔法の言葉。ネガティブ回路を駆逐してくれます。
しかもエレガントな女性に見えるため、周囲が大切にしてくれるというおまけも。その結果、自分を卑下したり他人を恨んだりしなくなるという、プラスのループが生まれます。
人に、趣味に、場所に、物に恋をしましょう。元気の源であり、好奇心ホルモンである「ドーパミン」を引き出す癖がつきます。ドーパミンは、ネガティブ回路を作る隙を脳に与えません。
「この体験でまた脳が洗練された」と考える
56歳で脳の出力機能を最大にするには、それまでにどれだけさまざまな体験をしたかがカギになります。ネガティブな体験をしたらそれを意識に書き込まず、さっさと消してください。成功体験をしたら、何度も思い返して成功回路を太くしておきましょう。
とはいえ、人間誰でも失敗したら落ち込みますよね。そういうときは「この体験でまた脳が洗練された。今後の人生に生かせるわ!」とポジティブにとらえればいいのです。そう考えれば、ストレスもたまりません。究極のポジティブシンキングです。
■この脳トレは、問題解決・情緒に関係する前頭葉と、記憶・言語に関係する側頭葉を鍛えます。
血糖は、脳内を走る電気信号のメインエネルギー。脳はすべての意識を電気信号で担っているため、糖分は欠かすことのできない大事な栄養素なのです。そのため甘い物を食べると脳は心地よさを感じ、瞬時に元気になります。
しかし、いい感じでいられるのは食べた直後だけ。高糖質な食べ物で急上昇した血糖値は、個体差はありますが、1時間半後には急降下を始めます。理由は、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の過剰分泌。
2時間が過ぎた頃には、空腹時血糖(脳が快適に機能するために必要な血糖値)を下回り、脳は危機的状態に陥ります。このとき、脳の持ち主である人間は、だるくてムカつきやすく、キレやすい状態に。幸せ脳とは程遠い状態になってしまいます。
問題はそれだけではありません。糖質の代謝には、脳内神経伝達物質(メラトニン、セラトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)の材料であるビタミンB群が使われます。
パンや菓子、白いご飯など、糖質主体の食生活者「糖質イーター」でいると、血糖値の乱高下とビタミンB不足の両方で、脳の質を低下させてしまうことになるのです。
食事の際は、野菜や海藻、こんにゃく、ところてん、大豆などの低GI食品(血糖指数の低い食品)から口にするのがベター。血糖値の急激な上昇が抑えられ、体は糖の安定供給体制に入るため、インスリンの過剰分泌を防ぐことができます。
脳と体の健康のためにも、食事を野菜とタンパク質中心で考える「タンパク質イーター」を目指しましょう。
■この脳トレは、脳全体が活性化して、身体の全ての機能に好影響を及ぼします。
人類は、二足歩行によって格段の脳進化を遂げてきました。「歩く」という行為によってもたらされる信号は、脳への最大の刺激のひとつと言っても過言ではありません。
歩くときに信号を受け取り活性化するのは、脳の中でも「小脳」と呼ばれる部位になります。小脳は、空間認識と空間制御を司る器官。「歩く・しゃべる・飲み物を飲み下す」など、生活に必要な筋肉の複雑な制御を担当しています。それに加え、「直感」にも深いかかわりがあることが、最近の研究でわかってきました。
歩くこと、体を動かすことは、小脳への刺激となり、子どもには知力やセンスをもたらします。大人なら発想力が豊かになりますし、老齢に至ってからは、生活能力を落とさないための大切なエクササイズとなります。よく「人間は歩けなくなるとボケる」といいますが、これなどはまさに真理を突いている言葉です。
そんな中、最近の研究で、足裏をブラッシングすると血中酸素濃度が上がり、毛細血管が活性化することがわかってきました。脳は、毛細血管に行きわたる酸素によって機能している最たる臓器です。
そういう意味では、「足裏磨きは脳磨き」といえるのかもしれません。
歯磨きと同じく、足裏磨きも習慣に
「かかとはガサガサしているのに足指の間はべたつく」という悩みを抱えている人もいるでしょう。実は足の裏に硬い角質があると、老けて見えるだけでなく、つまずきやすくもなります。
それは歩く際に脳が必要としている、路面の滑り具合や段差などの情報が上がりにくくなるから。程度によっては、深刻な老化問題に発展する可能性もあります。
そこで私がおすすめしているのが、摩擦力のあるブラシを使っての足裏磨きです。専用のフットブラシを使って、余分な角質を徹底的に磨き落としてください。角質を磨けば角質層にすむ菌もいなくなるので、水虫や嫌なにおいからも解放されます。
足裏がスベスベになるだけでなく、脳の劣化防止にも役立つ足裏磨き。歯磨きのように、毎日の習慣にしていきましょう。
■この脳トレは、触覚・空間認知に関係する頭頂葉とバランス・姿勢・運動・つかみに関係する小脳が刺激され、活性化します。